IMPROVE

2026.06.21

IRで信頼を失う行動とは?避けるべきNG対応まとめ

IRでやってはいけないことは?信頼低下を防ぐ注意点を解説


IRで信頼を失うのは、「情報を出さないこと」よりも、「一貫性のない説明や投資家を軽んじた対応」を積み重ねることです。特に、ネガティブ情報の後出し・場当たり的なIR・数字の裏付けがない楽観ストーリーは、長期投資家ほど敏感に嫌います。



【この記事のポイント】


信頼を失うIRは、「事実」を隠すより前に、「説明がコロコロ変わる」「IRだけポジティブに盛る」ところから始まります。


投資家が本当に嫌うのは、失敗そのものではなく、「失敗したときの説明の仕方」と「次の一手が見えないこと」です。


実務レベルでは、IRサイトの構造・開示のタイミング・Q&A対応の仕方を少し変えるだけで、「信頼を失うリスク」をかなり減らせます。



今日のおさらい:要点3つ


一言で言うと、「ネガティブな事実を隠す」「説明が毎回変わる」「質問に真正面から答えない」IRは、確実に信頼を削ります。


実は、投資家は完璧な会社を求めているわけではなく、「弱点も含めて正直に話し、改善の筋道を示してくれる会社」を評価します。


迷っているなら、「同じ質問を3回続けて受けたテーマを、次の決算資料で先回りして説明する」ところから変えるのがおすすめです。



この記事の結論


一言で言うと、IRでやってはいけないのは「短期の株価のために中長期の信頼を売ること」です。


最も重要なのは、悪いニュースほど早く・自分の言葉で説明し、数字とストーリーの一貫性を保つことです。


失敗しないためには、「何を話したか」だけでなく「何を話さなかったか」を意識し、IRチーム内で“NG対応の基準”をあらかじめ共有しておく必要があります。



「谷」:IRで信頼を失いかけた瞬間


ネガティブ情報の後出しで、一気に空気が変わる


正直なところ、IRの現場で一番胃がキリッとするのは、予定外のネガティブニュースが出るときです。私が以前ご一緒した企業では、海外子会社でのトラブルが発覚したものの、「事象は軽微」と判断され、開示タイミングが後ろ倒しになったことがありました。


その間、IR担当は何度もスマホのニュースアプリを更新していました。「まだ出ていない、まだ表に出ていない」と自分に言い聞かせるように。しかし、数週間後、業界のニュースサイトにスクープ記事が掲載され、一気にSNSで話題になりました。


翌日、投資家との1on1で、あるファンドマネジャーからこう言われました。




「事象そのものよりも、“なぜ会社側から先に説明しなかったのか”が気になっています。」



この一言の重さ。株価は一時的に下がりましたが、それ以上に、「今後、この会社は悪い情報を隠すのでは?」という目で見られるようになったのが、IR担当としては一番堪えました。


長期投資家の解説でも、「経営陣が株主に対して説明責任を果たさず、情報開示が不透明な企業は避けるべき」とはっきり書かれています。


事象の大小より、「情報の後出し」が信頼を削る――それを現場で痛感した出来事でした。一度ついた「後出しの会社」という印象は、次のニュースの読まれ方にも影響します。たとえ良い決算でも、「裏に隠していることがあるのでは」と疑いの目で見られるようになるのです。



「言っていることが毎回違う」ストーリーの迷子


投資家向けの解説では、「場当たり的な経営が目立つ企業」「長期的なビジョンが不明確な企業」は、長期投資では避けるべきとされています。


IRの現場でこの「場当たり感」が最も出やすいのが、「毎回、説明する成長ストーリーが違う」状態です。


よくあるのが、こうした変遷です。

ケースによりますが、方向転換自体は悪いことではありません。問題は、「なぜ変えたのか」の説明がないことです。


あるとき、決算説明会を終えた後の控室で、IR担当とこんな会話になりました。




私:「投資家から『前回と説明が違う』ってコメントありました?」

IR担当:「実は、アンケートにちらっと書かれていました。“どの戦略が本気なのか分からない”って。」



その一文を見たとき、部屋の空気が少しだけ重くなりました。「いいことを言おう」とすればするほど、一貫性を失っていく。IRの怖さはそこにあります。投資家が見ているのは、個別の戦術ではなく「経営の判断軸が一貫しているか」です。方針を変えるなら、その理由と、何を学んで何を変えたのかを丁寧に語ることが欠かせません。



IRサイトに“空白”がある状態


2025年のIRサイト解説では、「AI検索時代にはIRサイトのコンテンツ構造と非財務情報の充実が重要」とされています。


裏を返せば、「IRサイトに明らかな空白がある」こと自体が、信頼を損なう要因になり得るということです。


私がある企業のIRサイトを一緒に見たとき、アクセス解析ではトップページと株価ページにはPVがあるのに、「ガバナンス」「リスク要因」のページだけ極端に薄い、という状態でした。


画面を見ながら、CFOが小さくつぶやきました。




「…痛いところを突かれた感じがしますね。」



投資家向けの長期投資解説でも、「ガバナンスが不透明な企業」「リスク説明が薄い企業」は“買ってはいけない株”の典型例として挙げられています。


IRサイトの空白は、投資家の不信感を増幅させる“沈黙”になり得ます。投資家は数字以上に「何を語らないか」を見ています。語られない部分が多いほど、「自分たちで埋めて想像する余地」が増え、結果としてネガティブな解釈が広がりやすくなります。



「転換」:IRで信頼をすり減らす“NG対応”とは


株価対策のための過剰なポジショントーク


長期投資の観点では、「話題先行で実態が伴っていない企業」「将来の収益化の見込みが薄いのに期待だけを煽る企業」は、典型的な“危険サイン”とされています。


IRの場でも、短期の株価を意識しすぎるあまり、ポジショントークが過剰になることがあります。


よくあるNG

ある投資家は、「IR資料でスローガンが増えて、具体的な数字や検証が減ってきたら警戒する」と書いています。


それを読んだとき、私は思わず自分が作ったスライドを思い出しました。キャッチコピーを盛り込みすぎて、数字のページが薄くなっていた資料。あのスライドは、今でも心のどこかに引っかかっています。


投資家から見れば、「いいことばかりを言う会社」より、「痛いところも含めて話す会社」の方が信頼できます。「正直なところ、ここはまだ課題です」と一言添えるだけで、受け手の印象は大きく変わります。リスクや課題を自ら開示する姿勢は、「この経営陣は現場をちゃんと見ている」という安心材料にもなります。



投資家の質問を「受け流す」Q&A対応


長期投資家の解説では、「株主を軽視し、説明責任を果たさない企業」への投資は避けるべきとされています。


IRの現場でこれがもっとも体感されるのは、Q&Aの場です。


よくあるNG対応

一度、オンライン説明会のチャット欄で、同じ質問が2回投稿されたことがありました。最初はスルーされ、2回目にようやく短く回答されたのですが、その内容はかなり表面的でした。配信終了後、IR担当が画面を見つめながら、




「実は、あの質問、前回も別の投資家から来ていたんですよね…。」



と漏らしました。質問を受け流すことは、そのテーマについてきちんと向き合っていない証拠として、じわじわと信頼を削ります。


「今は答えられません」と素直に伝えるのは構いません。問題は、「いつまでに、どんな形で答えるか」を示さずに会話を打ち切ることです。次回のフォローを約束し、実際にそれを守ることが、地味だけれど最大の信頼回復策になります。



IRと実態のギャップが広がる「きれいごとIR」


長期投資で避けるべき企業の特徴として、「経営資源の配分が歪んでいる」「利益より雇用維持が優先されている」「ガバナンスの実態と表現が乖離している」といった点が挙げられています。


IRだけが「いい会社」を演じていても、実態とのギャップは必ずどこかで露呈します。


ある投資家がブログで書いていたエピソードが印象的でした。




「IR資料では“社員ファースト”が強調されていたが、一人あたり営業利益は同業他社の半分以下だった。」



福利厚生や人材投資を前面に出すこと自体は悪くありません。ただ、「その投資が収益性や成長にどうつながるのか」をセットで示さないと、「いい会社だけど投資はしたくない会社」に分類されてしまいます。


実は、こうしたギャップはIR資料にそのままにじみ出ます。スローガンやストーリーは立派なのに、KPIや実績のページが弱い。それを敏感に嗅ぎ取るのが、プロの投資家です。社内文化や価値観を語るのは大切ですが、それを「数字と接続する」一手間を惜しまないことが、IRの信頼性を支えます。



「山」:信頼低下を防ぐために、今すぐやめるべきこと


NG1:ネガティブ情報をギリギリまで引き延ばす


投資家向け解説では、「財務基盤が脆弱」「ガバナンスが不透明」「外部環境に振り回されやすい」といった企業は、長期投資では避けるべきとされています。


その中でも、特に重大なのが「情報開示の遅れ」です。


やめるべきこと

一度失った信頼を取り戻すのは大変だ、とマネジメント研修でも繰り返し言われます。


IRでも同じです。一度「後出し」の印象が付くと、その後のすべての説明が「本当か?」と疑われるようになります。


ネガティブ情報ほど、「完璧な答え」がそろう前に、「分かっていること・まだ分かっていないこと」を正直に切り分けて話す。また、公式発表より先にリーク記事や噂が先行した場合、『精査中』として沈黙を続けず、現時点で判明している事実と確認中の事項を直ちにTDnetで開示する体制がないと、市場の不信感は決定的なものになります。翌朝の出社時、ニュースアプリを開いたときの自分の心拍数を下げるためにも、その方が健全です。社内に「悪い情報ほど早く上にあげる」「迷ったら開示寄りに倒す」というルールを文化として根付かせると、危機時の判断が劇的にラクになります。



NG2:中計・KPIの“盛りすぎ”と検証のなさ


長期投資の指南では、「明確なシナジーのないM&Aを繰り返す」「現実味のない成長ストーリーを掲げる」企業への警鐘が鳴らされています。


IR資料でこれが出やすいのが、中期経営計画のページです。


やめるべきこと

ある経営者が、「中計は社内向けのモチベーション資料でもある」と話していました。その気持ちは分かります。ただ、投資家からすれば、「毎回実現しない目標」は、むしろ信頼を削る材料になります。


一度、「あの会社の中計は毎回“絵に描いた餅”なんですよね」と投資家が笑いながら話しているのを聞いたことがあります。その言葉が、耳から離れませんでした。中計を発表したら終わり、ではなく、「前回の中計のどこが当たって、どこが外れたか」を冷静に振り返るページを1〜2枚足すだけでも、IRの誠実さは大きく変わります。



NG3:IRサイトや資料を“放置”する


2025年のIRサイト解説では、「AI検索時代に対応した情報構造」「非財務情報の充実」「最新性の維持」が重要だと強調されています。


それなのに、IRサイトが数年前のまま止まっている企業は、想像以上に多いです。


やめるべきこと

長期投資解説では、「技術革新や市場変化に対応できない企業」「時代遅れのビジネスを続ける企業」は避けるべきとされています。


IRサイトが古いということは、「情報発信のアップデートに投資していない」シグナルに映ります。


私自身、IRサイトの改修後にアクセスデータを見て、「翌朝のアクセスの山の形」が変わるのを何度か見てきました。それは派手な変化ではありません。でも、「ちゃんと見てくれている人がいる」と感じられる、静かな変化でした。サイトの整備は、目先のリターンが見えづらく後回しになりがちですが、放置しているサイトほど、海外投資家や新規投資家との「最初の接点」で機会損失を生んでいます。



よくある質問(FAQ)


Q1:IRで一番やってはいけないことは何ですか?


A1:結論として、「悪い情報を後出しにすること」です。インパクトの大小に関わらず、先に自分の言葉で説明しなかった企業は、長期投資の対象から外されやすくなります。



Q2:株価対策のためにポジティブなメッセージを盛るのはNGですか?


A2:過度なポジショントークはNGです。数字や具体策の裏付けがない楽観ストーリーは、むしろ「危険サイン」として長期投資家に避けられます。



Q3:中計の未達をどう説明すべきですか?


A3:未達そのものより、「なぜ未達になったのか」「何を変えるのか」をセットで説明することが重要です。過去の未達をスルーして新しい目標を掲げるのは避けるべきです。



Q4:IRサイトが古くても、決算資料がきちんとしていれば問題ないですか?


A4:IRサイトの古さは、「情報発信への投資をしていない」シグナルとして捉えられるリスクがあります。決算資料だけでなく、サイト全体の更新性も信頼に影響します。



Q5:投資家からの厳しい質問には、どこまで正直に答えるべきですか?


A5:ケースによりますが、「分かっていること」と「まだ決めていないこと」を切り分けて話すのが現実的です。ごまかすより、範囲を限定して正直に話した方が長期的な信頼につながります。



Q6:IRで失った信頼は取り戻せますか?


A6:簡単ではありませんが、継続的な誠実な開示と、過去の失敗を正面から扱うことで、時間をかけて回復させることは可能です。ただし、後出しや虚偽説明が続くと、回復はほぼ不可能になります。



Q7:IR担当として個人でやってはいけないことはありますか?


A7:投資家との個別会話の内容を社内に共有しないこと、社内政治を優先して情報を曲げることは避けるべきです。IR担当の信頼が崩れると、個人にも組織にも悪影響が出ます。



まとめ



迷っているなら、次の決算期までに「ネガティブ情報が出たときの対応ルール」と「投資家から3回以上聞かれた質問リスト」だけでも、紙に書き出してみてください。その2枚の紙が、「やってはいけないIR」を避けるための、一番シンプルで強力なセーフティーネットになるはずです。


今のあなたの会社で、一番“不安が残る”のは、「ネガティブ情報の出し方」と「中計・KPIの語り方」、どちらに近い感覚でしょうか。

TOPページへ
CONTACT