一言で言うと「初回相談の成功は、事前のA4・1枚にかかっている」です。最も重要なのは、「現状のIR活動」と「解決したい課題(3つまで)」を具体的に言語化してから相談に臨むことです。失敗しないためには、「情報収集の雑談」で終わらせず、「次に何を一緒に検討するか」まで決めて帰ることが肝心です。
正直なところ、東証改革やPBR1倍割れの話が増えてから、「IR支援会社と一度話しておいた方がいい」と上から言われ、カレンダーが商談予定で埋まっていく担当者は少なくありません。
ある上場企業のIR・経営企画担当の方と、夕方の会議後にこんな会話になりました。
担当者: 「来月だけでIR支援会社との面談が4件入っていて…」
私: 「4件も。目的は決まっているんですか?」
担当者: 「いや、それが。とにかく情報収集しろという話で。結局、何を聞けばいいか、自分でも分からなくなってきて」
よくあるのが、
というパターンです。日本IR協議会の調査でも、約8割のIR実施企業が何らかのIR支援会社を利用している一方で、「支援内容や満足度にはばらつきがある」と指摘されています。
私たちがこれまでに多くの上場企業様から伺ってきたお話でも、 何も整理せずに臨んだ初回相談で……という『不完全燃焼のモヤモヤ』を抱え、スケジュールアプリを見つめてため息をついてしまう担当者の方は少なくありません
実は、IR相談の準備で一番効くのは、「サービスの種類を調べること」ではなく、「自社のIR活動のどこで詰まっているか」を、できるだけ具体的な行動レベルで書き出すことです。
タナベコンサルティングなどの大手コンサルも、IR活動の目的と現状の施策を整理することが、外部支援を活かす前提になると強調しています。
たとえば、
といった「ついついやってしまう具体的な行動」や、「気づくと夜中にIR関連の記事を読み漁ってしまう」といった自分の行動を振り返ると、課題が見えやすくなります。
私が以前、あるメーカーの担当者と初回相談の準備を一緒にしたときも、最初は「投資家との対話を改善したい」というぼんやりしたお題しかありませんでした。 そこで、直近3回の決算業務を振り返ってもらい、「どのタイミングで一番ストレスが高かったか」「何に時間を取られていたか」を書き出してもらったところ、
といった「詰まりポイント」が鮮明になりました。
「最初は半信半疑だったんですけど、こうやって書き出すと、どこを相談すべきかだいぶ見えてきますね」と担当者が少し表情を緩めたのを、よく覚えています。
初回相談前に、最低限整理しておきたいのは次の5つです。これをA4・1枚にまとめておくだけで、面談の質が大きく変わります。
1. 現在のIR活動の全体像
決算説明会、IRサイト更新、適時開示、1on1、統合報告書など、何をどの頻度で行っているか
2. 解決したい課題(最大3つまで)
例:決算期の業務負荷、英文対応、資本コスト経営の説明、PBR1倍割れの指摘への対応など
3. 今回の相談の優先順位
「次の決算1回で変えたいこと」と「3年スパンで変えたいこと」を分ける
4. ざっくりとした予算レンジと意思決定プロセス
年間◯百万円までなら部長決裁、それ以上は役員会案件…など
5. 社内体制と「動ける人」
IR専任の有無、関わる部署、実務を一緒に進められるメンバーの人数
よくあるのが、「予算は未定です」とだけ伝えた結果、支援会社側も提案の幅を絞りきれず、抽象度の高い提案書が量産されるパターンです。 ケースによりますが、レンジだけでも共有しておいた方が、お互いに時間の無駄が減ります。
ここで、実際の現場事例を1つ紹介させてください(業種や数字は一部変えています)。
業種: BtoBサービス、時価総額約150億円
面談社数: IR支援会社3社(1社あたり60分)
事前準備: 会社概要と決算資料を共有したのみ
結果:
業種: 製造業、時価総額約300億円
面談社数: IR支援会社2社(1社あたり75分)
事前準備:
結果:
B社の担当者は、「準備に1〜2時間使っただけで、ここまで話の質が変わるなら、もっと早くやっておけばよかった」と話していました。 決算前夜に急いでIR支援会社に電話をかけることも減り、翌朝、社内のエレベーターに乗るときの胸のざわつきが少し和らいだ、と。
IR支援会社との初回相談では、「サービスのカタログ説明」を聞くだけで時間が終わりがちです。 そうならないために、次の7つは必ずどこかのタイミングで聞いておくのがおすすめです。
正直なところ、「うまくいかなかったケースを教えてください」と聞くのは少し勇気がいります。 ただ、実は、ここでどれだけ具体的な話が出てくるかが、その会社の現場理解や誠実さを測る一つの材料になります。
IR支援会社・IRコンサルの比較ポイントとして、ビズマッチや日経BPなども「実績」「専門性」「対応範囲」「コミュニケーションの質」を挙げています。
初回相談を終えたあと、私は次の3軸でメモを整理するようにしています。
「専門性」: IR・ファイナンス・業界知識のバランス
「実務力」: 決算期のタイトなスケジュールや、日々のIR運用にどこまで伴走できるか
「相性」: 自社の価値観や経営陣との相性、話しやすさ
よくあるのが、「専門性と実績は十分だけれど、正直なところ、少し距離を感じる会社」と、「実績はそこそこだが、現場の温度感が近い会社」で迷うパターンです。 ケースによりますが、初めてのIR相談であれば、後者の「一緒に泥臭く考えてくれそうな会社」を選んだ方が、結果的にはうまくいくことが多いと感じています。
3社前後を目安に、「タイプの異なる会社」を混ぜて相談すると比較しやすくなります。同系統の会社ばかりだと、違いが見えにくくなります。
問題ありませんが、「このレンジなら決裁しやすい」という目安を共有しておくと、提案が現実的になります。
漠然とした状態でも相談可能ですが、「直近1年間で一番しんどかったIRの場面」を3つ挙げておくと、話が具体化しやすくなります。
IR担当だけでなく、経営企画や広報、場合によってはCFOや経営陣を含めると、意思決定がスムーズになります。
もちろんアリですが、中長期的には「IR戦略との整合」を見てくれるパートナーかどうかも確認した方が良いです。
最低でも60分、できれば90分あると、「現状のヒアリング+具体的な支援案のたたき台」まで辿り着きやすいです。
はい。ただし、「次に何を検討するか」「社内で誰と共有するか」だけは、面談の最後に合意しておくと、相談が「消化試合」になりません。
遠隔でも問題ありませんが、初回は資料を見ながら話せるオンライン会議が多く選ばれています。重要な局面では、対面を組み合わせる企業も増えています。